こんにちは。

感覚派にお届けする「五感カフェ」北川マキ子です。

今回は視覚の引力について深読みしてしてゆきたいと思います。

 

 

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人が写真をどのように眺めるのか?

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あなたにとって興味を引く対象とはなんですか?

そのときに現れるであろう視覚の引力を感じることはありますか?

 

視覚の引力

これは、画家や写真家をはじめ

アートを製作するあらゆる人にとって重要なポイントです。

 

ここでは、撮影者が写真をどのように構成すると

それを観る人の意識に影響を与えるか?を考えてゆきます。

 

ビジュアルアートの世界では

暗黙の了解として受け入れられていることですが

視線が引き寄せられる仕組みと理由については不明な点が多く、

また正確には解明されていません。

 

昔から、アートや写真の批評家たちが推測してきたことといえば

自分の経験と感情的な衝動によって

写真を眺めたときに何を感じとるか、

あるいは感じとるべきか、に論点が集まっていました。

 

この分野の研究はまだまだほんの数十年でしかありません。

 

専門的な言葉をあえて使うと、

人の視覚認知のスピードを測る「眼球運動測定」というものがあります。

 

このを「眼球運動測定」行うと

人間の目がシーンや画像をどのように眺めているかについて

実験的な証拠が得られることで広告界で知られています。

 

この画期的な研究結果は、人があるシーンの画像を眺めるとき

その視線は興味を持ったポイントからポイントへ

素早く移動しながら画面全体を見て回るということです。

 

 

(サッケードの参考画像)

 

 

両目を一緒に動かすこの動きは、

サッケード(跳躍性眼球運動)と呼ばれています。

 

目がこのような動きをする理由のひとつは

網膜の中心部の解像度だけを高くしてそのほかは

曖昧にしてもいいと無意識に選別しているからです。

 

簡単に言えば、わたし達人間は、

つねに「重要な情報だけ」を視ているという状態です。

 

このことは、人間の眼がテクノロジーを駆使しても届かないほど

素晴らしい機能であることを示しています。

 

また、脳は、連続的なサッケード運動により

全体の景色を短期記憶に組み立てることができている

証拠となっています。

 

目のサッケードは添付したイラストのように

点と点を結んで追跡できます。

その結果としていわゆる「スキャンパス」が記憶されます。

 

専門的なお話は「スキャンパス」についての参考文書↓

をお読みいただければと思います。

https://vision.kuee.kyoto-u.ac.jp/japanese/happyou/pdf/Ishikawa_PRMU201210_final.pdf

 

 

 

見ていた目の前の事象(ここでは写真)の上に

この追跡されたスキャンパスを重ねると

鑑賞者がその画像をどのように

どの順番で見渡したかがわかります

 

静止しした写真でも有名絵画でも

映画でもスマホの画面でも同じです。

 

これはすべて一瞬のうちに起きるため

(役20〜200ミリ秒間)、たいていの人は

自分がどのように目を走らせているのか意識しません。

 

しかし、研究結果によって

被験者がその経験から得ようとしているものに応じて

目の走らせ方にはいくつものパターンがあることがわかっています。

 

全部で3つありますのでご紹介します。

 

ひとつめはスタンダードと呼ばれるもの。

これは見る人は特に何も考えておらず

「ただ見ている」だけの状態のことを指します。

ぼーっとしているときや、特に急用がなくても

スマホの画面を見ているときのようなイメージです。

 

もともと、視線の動きは、新奇性、複雑度、不調和

といった要因に影響されます。

 

視線は興味のあるもの

見ているものの意味を理解するために

適切な情報が含まれている部分に引きつけられます。

 

同時に、深い意味を持たず自由に視線を走らせている場合には

「今まで見たことのある認識された知識」

の影響も受けてしまいます。

 

日常の中で斬新さを求めながらも

どこか、懐かしさや見慣れたものに

安心感を覚えることがあります。

これは誰しも経験したことがあるのではないでしょうか?

 

感情では「重要な情報」を欲していても、

脳は余計なエネルギーを使いたくないので

「新し過ぎて受け付けない情報」として認識するとされています。

 

また、ポートレイトのような人物写真では

「認識された知識」の中には「顔」「皮膚の色」「眼の色」

「パーツのバランス」「肌艶」「表情」など

「その人物の気分や意向について」何かを語っている

という観覧者の言葉(脳内情報)も含まれます。

 

つまり、「この人は何を語っているのか?」

と無意識に見ていることになるのです。

気が付いていないのですが、ここが広告やSNSなどに使用される

メディアの拡散率を決める要素となります。

 

ふたつ目は目的探査です。

字のごとく、目的がある場合

見る人は何かを求めて、あるいは特定の情報を探して

画像やシーンに目を走らせています。

 

このとき、観覧者は媒体に対して

「欲しい情報」を自覚し、その目的にそうように

探査を自ら進んで行っていると推測することができます。

 

そして、それはおそらくある種の悦びや楽しみ、ワクワクどきどき、

発見、わかりたい、という期待を含んでいます。

 

これは写真を見るきっかけとしては重要な心理です。

 

好きでない視覚情報は「見ないようにしている」と認識していても、

実は、無意識化では、気になっている証拠。

意識下では、顕在しているものを抑圧しているからです。

 

例えば、女性が、同性の若い女性のポルノシーンを

「見ないように」意図すればするほど

何かを探り、そこから得られる感情を抑圧しているとも考えられます。

 

ここは深いテーマなので割愛しますが

ポルノと呼ばれるジャンルが世界の表現から無くならないのは

人間の本能的反応と欲望に直結しているからです。

 

視点の走らせ方、3つ目はヴィジョンの解明です。

 

例えば、その画像を目にした時点で

何か普通とは違うもの、

あるいは説明できないものがあった場合、

視線はその状況を説明してくれる情報を探します。

 

いま、目の前の絵や写真や映像は

未知の世界を「知っている」または

「教えてくれている」

そういう解釈でものごとを見ているのです。

 

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錯視ー visual illusion とは?

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このように、人は自分が興味を感じるものに視線を向けます。

 

これは現実のどのようなシーンに対しても

今まで経験したときの記憶が

その度、その都度、

無意識に蓄積されていることを意味しています。

 

ひとつひとつは小さく、瞬間的であっても

脳内では完全にインプットできていることになります。

まるで薄いアクリルの下敷きが

毎秒、何千枚も重なりあってゆくようなイメージです。

 


 

 

 

知覚に関する研究はダイアナ・ドイッチュが研究発表した

錯視(さくし・visual illusion)などで明らかです。

 

視線を惹きつける主な要因としての「視覚の重要性」は、

言い換えれば、「事象の引き寄せ」のようなもの。

 

つまり、わたしたちが視ている世界には

視覚が引きつけられる対象が存在していることを

無意識化で認めていると言えます。

 

このことは、わたしたちが触れる

情報、写真、映像、空間認識を

どのように見せるのか?を決める際に

とても重要な機能にもなるポイントです。

 

印象的な写真を撮る際には、この視覚の引力を使用したり

グラフィックな要素と色彩の作用を取りまぜたりして

人がつい目を向けてしまう構図を意図的にすることができるのです。

 

次回は、この意図的な写真について

もう少し詳しくお伝えしてゆきます。

 

 

 

 

maquico kitagawa