こんにちは。 感覚派のあなたにお届けするコラム
「五感カフェ」北川マキ子です。
すっかり秋が深まり冬空を感じる日も多くなりました。
秋色などとも表現される自然のいろどりは
わたしたちが普段、「ひかりの色」に溢れていることを
教えてくれるようです。
今日はそんなひかりのお話です。
葉の色を愛でるこの季節になると
光と色の質感を視ている時間が長くなります。
頰をなでる冷たい北風と雲の切れ間から溢れる
とろけるような太陽ひかりが
これから来る色のない冬の時間を前に
わたしたちに草木の美しさを伝えてくれているように感じるのです。
葉の淡い赤、濃厚な橙、透けるような黄色、
情熱的な赤
さまざまな色彩は全てひかりの色です。
自然界の恵みをありがたく頂戴し
ひかりを愛でる季節がわたしは大好き。
普段はシンプルなモノクロームや
どちらかといえばブルーがかった
寒色系の絵作りが好みのわたしでも
この季節だけは、つい豊かな暖色の空を見上げてしまいます。
いつだったか、京都のお寺へ撮影へ訪れた際、
住職さんが手にザクロの実を持ってこんなことを話してくれました。
「今年のザクロ、すごく甘いですよ。
夏の光が良かったかも知れません。
果物は光を食べて成長するから
美味しい光をいっぱい食べた年は
甘くて濃厚な味になるのでしょうね。」
そう微笑むと、おひとつどうぞ、
と わたしの手に真っ赤に実ったザクロをくれました。
夏の日差しが強く、その後の雨量も多かった年の紅葉は
赤みが深く鮮やかでした。
真夏のうだるような暑さが
まるで上手くできた幻のように
急激にやってくる季節風や朝晩の冷えこみ・・・
それらすべてが自然の色彩に関係しています。
たとえばこれが、急な冷えもなく
穏やかな暖かい日のままだと
その年の葉の彩度は低く鮮やかさに欠け、
そのせいで景色も濁って映ります。
今年は本当に美しい、
と京都の住職さんがおっしゃったその年の撮影は
手がかじかむほど冷える日でした。
「果物の色は美味しい光を食べた色」
この言葉を聞いてからわたしは
暖色の季節を写真におさめるとき
色と光の関係性を大切にするようになりました。
本来、風景は色彩を愉しむものです。
純粋に、「わあ、きれい」と感動することに意味があります。
けれど、それを写真におさめると
どこで誰が撮っても同じような写りになってしまいがち。
つまり、情景や色彩ばかりに頼ってばかりいると
そのとき、どこにどう心が動かされ、
何に美しさを感じたのか伝わりづらくなるのもしかりなのです。
だから、色だけではなく 【光の質を見抜く感性】
が大切になります。
それを意識するだけで、
きれいだと思った印象はそのまま
レンズ越しに見たときの光の入り方や、
どのように光が当たっているのか
どんな質感なのかを吟味しながら
時間をかけてシャッターを切るようになります。
そのときの光と色が奏でる色彩を前に
空気の冷たさも乾燥する頰も、
眩しい逆光も、それらが全部複雑に絡み合って
「わたしの目の前」に現れていることを五感で汲みとるのです。
空に透ける葉脈の形状や
赤い葉にうっすらと残る雨の雫の跡に
きれい、を感じたとき
美味しい光を食べたような幸せな気分を味わうことができます。
だから、食いしん坊のわたしは
愛でることに集中するその時間が好きなのかもしれません。
そして、実を言うと
写真家はわたしをはじめ紅葉写真など興味がない人が多いのです。
美味しいひかりで五感が満たされて
お腹がいっぱいなのかも知れませんね。
あなたの感覚の満腹度はいかがでしょうか?
maquico kitagawa
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